『陽はまた昇る』

陽はまた昇る

ページを数枚めくっただけでゾワゾワっとしてドキドキした。
おおよそ芸術とは程遠い自分が、写真を見てこんなに気分が高揚するとは思わなかった一冊。

イーラ『85枚の猫』

オリジナルは1952年、女性写真家イーラによって生み出されたもの。表紙は2匹が寄り添うモノクロ写真。オビには”猫写真の古典的名作”という言葉が踊り、前書きではあの岩合光昭氏が自分の教科書とまで言い放っている。これは買わねば、と半ば義務的な感覚だったか、手に入れたときの満足感はそれほどのものではなかったように思う。

だけど、表紙を開くと何やらただならぬ雰囲気を感じて、数ページ進んだ頃には完全にノックアウトされていた。多くはスタジオで撮られたもので、背景を活かした写真はほとんど無く、猫だけをシンプルに切り取ってある。といっても”かわいい”とか”いやされる”というようなヒーリング的なものではなく、人間とは異質の獣感が漂い、撮り手と適度に距離感がある。そのほどほどな距離感が絶妙であり、決してフレンドリーな写真ではない。

動物的な体の曲線、ダイナミックな動き、表情、眼光、息づかい、撮り手との空気感。モノクロの陰影描写とあいまって、実にシンプルに伝わってくる。

岩合氏が猫写真を撮るきっかけ、教科書とまで言う一冊だけど、日常の憧憬や季節感、人との関わり合い、可愛い表情を写しとる昨今の氏の作品たちとは一風異なる。ただ、被写体との距離感、漂う空気感は、似通っているように思う。

自分にとっても忘れえぬ一冊であり、やはりこれは教科書でもある。

2015-09-09 | Posted in Diary, NekoNo Comments » 

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